豊前神楽

【豊前岩戸神楽】
九州の北部に位置する豊前国に分布する神楽座の総称を豊前岩戸神楽といいます。
古代、自然信仰を敬う人々は、自然界の強烈なエネルギーを人間界に浸透させたいと願い、それによって人々の生活が豊かに平和を構築できる方法だと信じられてきました。
豊前岩戸神楽の特徴は、太陽信仰をベースに山岳修行の祈祷術が擦り込まれているところにあります。
明治期の神仏判然令によってその姿は神話をベースにした舞いに変えられましたが、舞いの所作のいたるところに修験道の祈祷術が用いられており、この地方独特の伝統芸能として紡がれています。

求菩提山

【豊前神楽発祥】
豊前国は修験道の行場が今も残されている場所が多いのが特徴です。
その中でも豊前市の南に聳える求菩提山は古くは求菩提五百坊と言われ、英彦山と並んで修験道の行場として隆盛を極めた霊所です。
この場所で執り行われていた祭祀儀礼が後の神楽のルーツとして祈祷術が伝承され、各神社の社家によって伝承され、明治以降は氏子に伝えられた歴史を持っています。
いわば、この霊山の文化こそ、豊前岩戸神楽の始まりといえます。
自然信仰と山岳修験道の祈祷術、更に古代仏教が混沌と入り混じり、この地方独特の信仰が生まれ、それは今でも各地の伝統芸能である神楽として受け継がれています。

八面山

大分県中津市に聳える独特の形状をした八面山。
古くは箭山と呼ばれていた霊山は、様々な角度から山を眺めても同じ形をしていることから八面山と言われるようになったと伝えられています。
この山も求菩提山と同様、修験道の霊所として発展した場所で、山頂には古代の巨石信仰が今もそのまま残されています。
今なお残る巨石を磐座とし、人々の生活の安泰を願うために神をおくだりさせる舞いこそ神楽の役割だったことでしょう。

湯立神楽

【豊前岩戸神楽湯立奥儀】
修験道の祈祷術をベースに神話の天孫降臨をストーリーに持たせた豊前神楽最大の演目です。
山岳信仰の「松倒し」がこの演目を創り出していると考えられています。
陰陽五行思想をそのまま神楽とすることで、天地泰平を祈願する祈祷神楽です。
他所では見られない高い位置に掲げられた斎釜、高さ10mほどの斎鉾など、特殊な仕掛けを用いるのが特徴で、圧倒的な存在感を放ちます。